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かるとCAT第4弾、『本』です。
長いですがお付き合いください(^_^;
では、続きからどうぞ
放課後を告げるチャイムが鳴ってすぐ、私は図書室へ向かった。
それはもう、私の日課になっていた。
なぜなら、私は元々本が好きで、それに加えてここは想い出の場所だから。
図書室にはいつも誰もいない。先生もいつも来るのが私だけと知ってるので、司書室に籠りっぱなし。
でも、その方が私は落ち着くから良かった。
本棚から一冊の本を取り出して、いつもの席に座って読み始める。
すると、誰かが来た。顔を上げて、見えたのはよく知った顔。
「どうしたのですか?図書室に来るなんて、貴方にしては珍しいじゃないですか」
微笑みながら、言ってみる。彼は少し眉根を寄せた。
「悪い?たまにはいいだろ。あと、敬語」
「はいはい。わかってるよ」
彼は早瀬優樹。私が中等部に入って初めて仲良くなった子だ。子、なんて言ったら気を悪くするかもしれないけれど。
「あのとき以来じゃない?図書室に来るの」
「そうだっけ。気にしてないから知らない」
あのときも、彼はこんな感じで話していた。
それは今から、丁度半年くらい前のこと。
あの日、私は初めて放課後図書室へ行った。
すると。
(……寝てる?)
彼が、まるでそこだけ空間を切り取ったみたいに、周りなんておかまいなしに、眠っていた。
(図書室で寝るって……)
上靴を見ると一年生なのに、度胸がある。初めて彼を見て思ったのはそれだけで、私は気にせず読書を始めた。
一時間ほど経って、彼は目を覚ました。
「あ、起きた?」
「…………」
彼は私を訝しげに見つめた。そりゃそうか。初対面の人が親しげに話しかけて来たら、私だって同じ反応をするだろう。
「私、如月加耶。同じ一年生だよ。よろしくね」
あのとき私は彼がどういう人か知らずに声をかけたけど、彼のことを知った今思うと、よく声をかけたと思う。
一方、彼は私のことを知っていたらしい。
「如月家のご令嬢の?いつも敬語で話すっていう……」
「あっ……」
私は思わず口を押さえた。
私の家は古くからの名家で、私はその次期頭首。だから、祖母にいつも礼儀正しい態度をしなさいと言われている。
普段から敬語で話すのもその一つ。けど、今回はそれをすっかり忘れていた。
「お願い。このことみんなに言わないで。おばあさまに知れたら……」
夕食抜きくらいは目じゃない。
私が必死でお願いするのを見て、彼は意地悪そうな笑みを浮かべた。
そして、彼は私の耳元に顔を寄せる。
「いいよ。その代わり————」
優樹と分け隔てなく話せるようになったのはそれからだ。
彼と仲良くなってすぐはクラスメイトたちがものすごく驚いてたっけ。
あの頃は、彼が毒舌できつい性格の人だとは全然知らなかった。
『その代わり、俺の前では敬語を使うなよ』
なんて。
私の耳元で囁いた後も、平気そうにして実は耳が真っ赤になってたのを覚えてる。
それを思い出して思わずくすっと笑うと、優樹が不機嫌そうな目を向けて来た。
普通の人なら怖がるだろうその目も、私には愛おしい。
「何笑ってんだよ、加耶」
「———何でもない!」
私たちの秘密の出逢い。
それを知っているのは、私たちを囲む本だけだった。
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無題
何かいつもしょーちゃんの小説読むと「しょーちゃんっぽいなあ」って思う←
今回は早かったねw
透 2009/08/01 09:33 EDIT RES
Re:無題
ありがとう♪
今回は透くんも早かったしね。がんばったよ(-^ω^-)
初夏 2009/08/05 09:15