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- Newer : こんにちはー。
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となりに在る体温
「すっずむっらせっんせー」
もうほとんど珠洲村の自室のようになっている地学教室に、少し高めの少女の声が響く。珠洲村はキャスター付きの椅子をキィと鳴らしながら、棚の向こうから顔を出した。
「おー、呼んだか?」
「明らか呼んでんだろーが」
珠洲村を呼んだ少女の横で、少年が呆れを表す。
「そーゆーなよ、村山。おちゃめなジョークだろ」
「いい年したおっさんがおちゃめなジョークとかふつー言わねーだろ」
確かにその通りである。
正論を言われ、珠洲村は顔をしかめて黙り込んだ。
「って、碧斗!そんなこと言うために珠洲村先生呼んだんじゃないでしょ」
ぷぅっと頬をふくらませると、碧斗は小さく「悪ぃ」と呟いた。
「珠洲村先生。今日の天体観測のこと、覚えてるよね?」
「……当たり前だ。俺は一応顧問だからな」
「一応じゃなくて、ちゃんと顧問だろ」
碧斗が即座につっこむ。その横で、少女が苦笑していた。
「…………明日原も大変だな、こんなやつが彼氏で」
「こんなやつとはなんだ、失礼だな。彩夏も何か言ってやれよ」
彩夏は溜め息をついた。自分が大変な原因は、碧斗だけではない気がするのは気のせいではないだろう。
「もー、二人ともやめてよね。あと、碧斗はわたしの彼氏じゃないですから」
「あれ、そうだったっけ?」
「先生は人の話聞かなさすぎなんです!」
怒る彩夏に、珠洲村は「そう怒るなよ」と笑った。これでは話が進まないので、彩夏は無視して天体観測の話を始める。
「今日の天体観測は屋上ですよね?」
「ああ。でも、機材とかは運ばずに裸眼で見りゃーいいだろ」
「……めんどくさいんでしょ」
「ご名答♪」
一つ笑うと、珠洲村はコーヒーを入れるために席を立った。
「じゃ、もう屋上上がってますよ?」
「おうよ。七時になったら俺もいくから、落ちたりすんじゃねーぞ」
「はーい」
わざわざ手を挙げて返事をすると、彩夏は碧斗の手を引いて屋上へ向かった。
「わぁ……!」
冬の空には、満天の星空が広がっていた。今まで天文部は彩夏一人だったので、暖かい季節にしか天体観測はやらなかった。なので、彩夏は冬の星空を見るのは初めてだ。
「きれいだねぇ……」
彩夏と碧斗は、屋上の真ん中に座った。
彩夏はそっと碧斗の方を見た。じっと星空を見る瞳は、新しいおもちゃを貰った子どもみたいに輝いている。いつもは他人を興味なさそうに眺めているその瞳が、彩夏は好きだった。そして、碧斗のことも。
口に出したことはなかった。自分と碧斗だけの部活。両想いじゃなかったら気まずくなるだけだ。そう思って、今まで友達でいて来た。
(でも、多少気づいてくれたっていーじゃんねー……)
「ん?」
視線に気づいたらしく、碧斗が彩夏の方を向く。
「なんでもないよ?星見よ」
「んー」
言われて星空へと視線を戻す碧斗を見て、彩夏は思い出した。そういえば、碧斗が転校して来たのも冬だった。
(去年の冬だっけ?そんですぐに天文部に誘ったんだよね)
碧斗は元々、彩夏の隣の家に住んでいた。だが、小学校に上がると同時に引っ越していった。
彩夏は、碧斗が教室に入って来てその瞬間にわかった。幼なじみの、あの碧斗だと。そして、たまたまとなりの席だった碧斗を、転校初日にも関わらず彩夏は天文部に誘ったのだ。星が好きだったのか、彼はすぐにOKしてくれた。
考えたらそれも少しおかしい。転校初日に誘った自分も変だが、碧斗もよくOKしたものだ。
そう考えると何故か笑いがこみ上げて来て、彩夏はくすくすと笑った。笑い声に気づいて、碧斗が訝しげな目を向けてくる。
「なーに笑ってんだよ、彩夏」
「なんでもないってばー」
にこにこと笑う。去年、碧斗が転校してくるまでは、天体観測はいつも一人だった。淋しさを押さえながら、堪えるように星を見上げていた。
でも、今は違う。
「ありがとね、碧斗」
彩夏は小さく小さく呟いた。
もう、淋しくない。
一人じゃない。
いつだって、となりに在る体温が教えてくれるから。
+++
はい、ひっさびさのお題更新でしたー。
相変わらずの駄作ですいません;;
幼なじみに贈る5つのお題は次で終了です。来月末までには上げたいです。
そろそろこっちも更新しないと;
では、次も読んでいただけると嬉しいです。気長にお待ちくださいませ^ ^
配布元:TV
2009/09/16 □お題□ Trackback() Comment(0)
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