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大切な人と離れるのは、すっごく淋しい。
だからわたしは、あの方法をとったんだよ。
それは、ある日の休み時間。教室での出来事。
「———引っ越し?」
「うん。お父さんの仕事の都合でね。ほら、うちって父子家庭だから。あたしだけ残るとかできないから…‥」
そう言って、わたし——ううん、あたしは下を向いた。大好きな人に別れを告げたのに、ちっとも哀しくないなんておかしいから。哀しくなかったけど、あたしは哀しいフリをした。
「しょうがないよね。ごめんね」
そう言い残して、あたしは自分の席に戻った。
あたしの席は麻浩より後ろ。だから、授業中も麻浩がよく見える。
チャイムが鳴るまで、あたしはずっと麻浩を見てた。
放課後、麻浩は怒ったように言った。
「お前な!授業中ずっと見てたろ」
「だってあたしの席、麻浩より後ろだもん」
「それ、理由になってねぇから」
会話をしながらも、あたしは麻浩をずっと見る。すると、自然に顔が笑ってた。
「なーにニヤニヤ笑ってんだよ」
「なんでもない」
「…‥で、見てた理由は?」
「………‥」
視線をそらしてごまか…‥そうとしたけど、顔を覗き込んで防がれた。
「ほれ言え」
「…‥……‥だって、もう簡単には会えなくなるでしょ」
拗ねていったあたしの言葉を、麻浩は黙って聞いててくれた。
「だから、忘れちゃわないように。いつでも、麻浩のこと思い出せるように、見てたの」
相槌いれて、優しく笑って。麻浩は聞いててくれた。単純なあたしの考えを。小さい子みたいな、バカなあたしの行動の意味を。
「わかった。じゃ、今日一日ずっと見てていいよ」
「もうすぐ終わるけどね。もう放課後だし」
「…‥」
痛いとこをついちゃったらしく、麻浩が押し黙る。
もうすぐ終わりだけど、でもそれでもよかった。引っ越しまでにはまだ、充分な時間があったから。
あたしはこの日で一番の笑顔を浮かべてみせた。
「ありがと」
あれから、一人称が変わってしまうくらい大人になった。
電話しかしてないけど、わたしの中の麻浩は、色あせずに消えることなく残ってる。
それはきっと、信じてるから。
たとえ離れてしまっても。
わたしたちはこの空でつながってる。
なによりも、この記憶で。
この瞳に君の姿が残っている限り、ずっと。
瞳に映すは何故に
2009/03/30 □かるとCAT□ Trackback() Comment(0)
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